棋界の美学を湛えた駒の書体『菱湖』
菱湖体の歴史と変遷
菱湖体は、江戸時代の囲碁棋士で書家の本因坊道策によって生み出された駒の書体です。道策は、碁盤上の戦いにおける美学を表現するために、駒の書体に独自の工夫を凝らしました。菱湖体は、道策の号である「菱湖」に由来しています。
菱湖体は、それまでの駒の書体よりも洗練されており、字画が細く美しいのが特徴です。また、碁盤上の駒の配置を考慮して、縦横のバランスや余白の取り方にこだわり、審美的な観点からデザインされました。
菱湖体が広く普及したのは、明治時代に本因坊秀栄が「本因坊流碁経大全」を出版したことがきっかけです。秀栄は、序文の中で菱湖体の美しさと機能性を称賛し、碁界に広く奨励しました。